いんです……若いものはみんなみじめな肉欲のプロですからね……女の子だってそうです。大人が受けている自由を吾々は禁ぜられているのです……ですから異性の香《におい》を嗅ぎながら眼を閉じて……」
記者はこれ以上書く勇気を持たぬ。しかし何という巧《たくみ》な議論であろう。何という不愉快な風潮であろう。
少年少女の不良行為が、大人の専制に対する反逆的意味を持っていようとは、この時まで気が付かなかった。記者も矢張り明治人であった。
こうした反逆気分は、少年少女が使う新しい言葉にもうかがわれる。
おやじのシャッポ
新しい言葉の字引きなぞいう書物が近頃流行するが、現在の東京の少年少女が使う新しい言葉は、その中には一つも見当らぬと云っていい。又見つかる筈もない。日毎に月毎に、次から次へと新熟語が出来て、或は親たちを馬鹿にするために、又はいい人と秘密通信をするために用いられている。
ブル、プロ、ファン、セット位しか知らない明治人に、彼等の会話や手紙が理解されよう筈がない。
「おやじのシャッポ(ポコペンとか駄目とかいう意味)がホームラン(流連《いつづけ》のこと)」だの、「彼女のラジオ
前へ
次へ
全263ページ中125ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング