れぬ。

     吹きまくる不良風

 震災前、東京には各種の学校が、著しい増加の傾向を示した。
 私塾程度のものから、半官立と云っていいもの、又は純然たる官立のものまで、あらゆる階級と種類がミッシリと揃った。そのために官立は真面目なもの、私立はズボラなものという、昔の区別が曖昧になって来た。
 同時に、私立に通う男女生徒の服装に、官立と見分けのつかないのが殖えて来た。殊に私学の権威が高まったこと等は、一層、この官立の真面目さと、私立の不真面目さを歩み寄らせた。
 男の生徒では、私立の職業学校生徒も、官立の生徒も、睨みの利き方が同等になって来た。女学生では、私塾の生徒も、大きな学校の生徒も、幅の利け方が似寄って来た。
 官立も、私立も鳥打帽が大流行で、職業婦人の卵も、賢母良妻の雛《ひよ》っ子も、踵《かかと》の高い靴を穿いた。
 取締のゆるい学校生徒が、厳重な学校生徒を恐れなくなって来た。
 こんなのが震災後ゴチャゴチャになって、時間を隔てた――又は隔てない共学をやった影響がどんなものであるかという事は想像に難くない。
 不良風はその後|益《ますます》増加した各種学校の官私立を隔てずに
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