吹きまくった。驚くべく悲しむべき出来事が到る処に起った。
家庭の価値《ねうち》がゼロ
東京は昔から不良少年少女の製造地として恐れられていた。そこへこの間の欧州大戦が思想上から、又、大正十二年の大地震が実際上から影響して、今のように多数の不良少年少女を生み出すに到った順序は今までに述べて来た。
あとに残って少年少女の堕落を喰い止めるものは、唯家庭の感化ばかりである。
ところが、現在の東京人の家庭の多数はこの力を失っている。お父様やお母様の威光、又は兄さまや姉さまのねうちが零になっている家庭が多い。
第一に、現在の親たちと、その子女たちとは思想の根柢が違う事。
第二に、上中下各階級の家庭が冷却、又は紊乱している事。
主としてこの二つの原因があるために、現在の東京の子女には、その家庭に対するなつかしみや敬意を持てなくなっているのが多い。
明治思想と大正思想
東京は明治大正時代の文化の中心地である。だから、そこに居る子女の父兄たちは、大抵明治時代のチャキチャキにきまっている。
明治時代は、日本が外国の物質的文明を受け入れて、一躍世界の一等国となった時
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