きながら左手を三平の肩にかけて顔をのぞき込んだ。
お金は……
三平は左手で煉瓦の包みをさし出した。
男は受け取りかけてビックリして手を引いた。
三平は平手で男の横っ面《つら》を打った。
男は飛び退《の》いて短刀をふり上げた。
三平は煉瓦で、男は短刀で立廻りを初めた。
娘は仰天して駈け出した。
三平は煉瓦を投げると男の胸に当った。
男は引っくり返った。
三平は馬乗りになった。短刀を奪って投げ棄てた。
男は下からはね返した。
上になり下になり揉《も》み合ったあげく三平は組み伏せられて咽喉《のど》を絞め上げられた。
ヒ……人殺し……
男は短刀を拾おうとした。
三平は拾わせまいとした。声を限りに叫んだ。
泥棒……人殺しッ……
男は三平を突き放して逃げようとした。
三平は帯を引っぱって武者振り付いた。
材木屋の若い者が大勢飛び出して来て二人を取り巻いた。
三平は叫んだ。
おれあ三平だ……
こいつが泥棒だ……
若い者が二三人男に飛び付いた。散々になぐり付けた。
警官が質屋の娘と一所《いっしょ》に駈け付けた。
警官は三平の顔に懐中電燈をつき付けた。
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