見まわし足音を忍ばして茶の間に忍び込んだ。箪笥《たんす》の抽出しを開いてお神さんの着物を盗み出した。それから湯殿《ゆどの》へ行って電気をひねった。
三平は鏡をのぞきながらそこにあるお白粉《しろい》を真白に塗り付けた。黛《まゆずみ》で眉と生え際を塗った。お神さんの着物を着て帯を締めた。次にスキ毛を頭に載せて手拭いを冠った。女中の下駄を穿《は》いて裏口へ出てあとをピッタリと締めた。
三平は風呂場の裏にまわって積んである煉瓦《れんが》を一ツ取り上げた。そこに干してある越中褌《えっちゅうふんどし》で包んで紐《ひも》でグルグル巻きにして袖の間に抱え込んだ。材木の間を通って最前の男と女が話していた処へ来てシャガンだ。ギョロリギョロリと見まわした。
最前の質屋の娘が来かかったが三平の姿をすかして見ると急に物蔭に隠れた。
―― 6 ――
質屋の娘が隠れたのと反対の方から鳥打にインバネスを着た男が近付いて来た。暗《やみ》をすかして三平を見ると近寄った。
三平はシナを作って近寄った。
のぞいていた娘はハンケチをビリビリと喰い裂いた。
男はあたりを見まわした。右手でソッと短刀を抜
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