いで引返して来て徳市の耳に何事か囁やきつつ札の束を仕舞《しま》った。
徳市はワナワナ顫《ふる》え出した。
憲作は徳市の手を引いて立ち上った。
数名の警官が乱入した。
憲作はピストルを放った。
警官が二名倒れた。
憲作と徳市は屋根から逃れ去った。
―― 17[#「17」は縦中横] ――
徳市と万平(憲作)は自動車で星野家を訪れた。
智恵子|母子《おやこ》は喜んで出迎えた。
徳市は応接間で智恵子と話した。
万平と時子は智恵子の父の肖像を掲げた書斎で相談をした。
時子はやがて手提《てさげ》金庫から株券の束を出して万平の前に置いた。
万平は株券を調べた。満足の笑みを浮かめた。懐中から札の束を出して机の上に置いた。
お望み通りの価格で……
唯今頂戴致しましょう……
時子は深く感謝してうなずいた。
万平は株券と札の束を取り換えた。株券を手提鞄の底深く仕舞った。
時子は手先をすこし震わしながら札の束を勘定し終って叮嚀にお辞儀をした。手提金庫に仕舞った。
憲作は帽子と外套を取って立ち上った。
私はすこし急ぎますから……
これで失礼します……
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