てやる……
徳市は図星を刺されてギョッとした。大きな溜息を一つした。うなだれて考えた。やがて思い直して憲作の顔を見た。うなだれたままポツポツ話し出した。
憲作は腕を拱《こまぬ》いて聴いた。時々眼を丸くした。最後に高らかに笑った。
ナアーンダ……
それ位の事か……
徳市は眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った。
憲作は札の束を両手でしっかりと持って徳市に見せた。
イイカ……
この札でこの株を買うんだ……
買ったその株をすぐに売って現金にかえる……
それから星野家へ行って贋札とすりかえる……
俺はその間の利益を取る……
罪にはならない……
どんなものだ……
徳市は喜びの余り口をアングリした。憲作に縋《すが》り付いて拝んだ。
憲作は悠然と笑った。徳市の耳に口を寄せて何事か囁やいた。
徳市はいくつもうなずいた。
憲作は室《へや》の隅から酒とコップを取って徳市にすすめた。
徳市は神妙に手を振った。
憲作は笑って一杯干した。二杯目を注ごうとする時フト階下の方に耳を傾けた。コップと酒を隅に片付けて窓の破れから外をのぞいた。急
前へ
次へ
全48ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング