すが》って這入って来た。徳市の花束を受けると涙ぐましい程喜んで母に見せた。
徳市は智恵子|母子《おやこ》に立派な服装をした老紳士を紹介した。
私の叔父です……
足達|万平《まんぺい》と申します……
父同様のもので……
万平は鷹揚な態度で名刺をさし出しながら、
お近付きに……
お茶を一ツ……
お差し支えなければ……
と二階の食堂の方を指した。
智恵子母子は感激に満ちたお辞儀をした。
―― 13[#「13」は縦中横] ――
四人の席は帝劇の食堂で注目の焦点となった。
王冠堂の番頭久四郎は友達二人とはるか向うの席でビールを飲んでいたが、四人の姿を見ると驚いてフォックを取り落した。
友達は怪しんで理由《わけ》を尋ねた。
久四郎は顔をじっと伏せて友達の顔を見まわした。苦笑しながら唇に手を当てた。
智恵子|等《ら》四人は立ち上った。
万平は徳市に眼くばせをした。智恵子|母子《おやこ》に向い叮嚀に一礼して別れを告げた。
徳市は不満そうな顔をして頭《かしら》を下げた。
智恵子母子は二人を引き止めた。
まあこのままでは……
是非宅まで
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