醒めた。
警視と警部と私服巡査の三人が徳市を取り巻いた。
王冠堂の番頭久四郎は証人として傍《そば》に居た。
警部がボロボロの十円札と受取証と指環のサックを突き付けて徳市を訊問した。
徳市はメソメソ泣きながらも何もかも白状した。
津島商会は……
金杉橋《かなすぎばし》停留場の近くです……
警官連は顔を見合わせた。
警視は呼鈴《よびりん》を押して一人の警部と三人の私服巡査を呼んで何事か命令を下した。
四人の警官は自動車に乗って去った。
徳市はそのまま留置所に入れられた。
番頭久四郎は一枚の名刺を出して警部に渡した。
これは主人の名刺で御座います……
失礼で御座いますが代理としてお願い致します……
実は店の信用に拘《かか》わりますので……
どうぞなるべく秘密に一ツ……
警視はうなずいた。
久四郎は一同に叮嚀にお辞儀をして去った。
人夫頭の吉が入れ代って這入って来た。警視に名刺を出してお辞儀をしながら汗を拭いた。
私服巡査が留置所の中の徳市に会わせた。
吉はなまけものの徳市に相違ないと保証した。徳市に向って忌々《いまいま》しげに云った。
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