を持って急いで這入《はいっ》て来た。
まことに恐れ入りますが……
只今の指環を今一度チョト拝見さして頂きとう御座います……
余計に頂いておりますようですから……
徳市はサックを渡した。
久四郎は受け取ってハンケチを解き初めた。非常に固く結んであるのを解いてサックを開くと空《から》であった。
徳市はビックリして立ち上った。
久四郎は素早く室《へや》から飛び出してあとをピッタリと締めて鍵をかけた。
徳市は狼狽して中から大声を揚げた。扉を動かしたがビクともしなかった。床の上にペタリと坐った。頭を抱えた。
久四郎と私服巡査が扉を開いて這入って来た。眼の前に徳市が坐っているので驚いて後退《あとじさ》りをした。
久四郎は私服巡査に札《さつ》を見せた。
この通り贋《に》せもので……
この男が共犯なので……
徳市は縮こまった。
私服巡査は徳市の両手を捉えて手錠をかけた。
立て……
徳市は老人のように頭を下げて腰をかがめて歩き出した。
外へ出ると私服巡査は徳市を突き飛ばした。
こっちだ……
―― 8 ――
徳市は警察に来るとすっかり酔いが
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