ます……
当店で最上の質のいいダイヤで御座いまして……
憲作は内ポケットから大きな金入れを出して百円札を念入りに勘定して久四郎に渡した。代りにサックに入れた指環を受け取った。
久四郎は札を勘定し初めた。途中でちょっと躊躇して眼を伏せたが又初めから静かに勘定し初めた。
憲作はサックに入れた指環を一度あらためて、サックの上から新しい半巾《ハンケチ》で包んで恭《うやうや》しく徳市に渡した。
徳市は夢のように受け取った。そのままポケットに仕舞った。
久四郎は別室でお茶を差し上げたいからと云って二人を案内した。
憲作は急ぐからと断りながら札の残りを調べ終ると久四郎が止めるのもきかずに店を出た。表の自動車に乗って去った。
徳市も帰ろうとするのを久四郎は無理に止めた。
つまらぬものですが……
お土産に差し上げたいものが御座いますので……
是非お持ち帰りを……
どうぞこちらへ……
―― 7 ――
徳市は無理やりに応接間のような処へ連れ込まれた。
久四郎は出て行った。
給仕女が這入って来て徳市の前に珈琲《コーヒー》を置いて去った。
久四郎は最前の札
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