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◇江戸ッ子は個人主義で、自惚《うぬぼ》れが強くて理解が一つもない。
◇洒落気《しゃれけ》ばかり強くて、物事に根気が無く、趣味が古くして、進取的気象に乏しい。
◇生活は頗《すこぶ》る平民的のようで、その精神は小さな貴族である。
◇天下を取る頭も力も無く、只その日その日の趣味的生活を貪って、誰が天下を取ろうが、政治をしようが平気の平左である。
◇江戸ッ子は亡国の民である。
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 といったようなもので、極端なのになると……、
「江戸ッ子は講談や落語に出て来るほかには、現代のどこにも居ない人種である。居るとすれば、それは昔の江戸ッ子の風《ふう》付きや気分を真似る掴ませもので、そんな奴は亡びちまうが日本のためになる」
 というような極端なのもあった。
 記者はこうした「江戸ッ子衰亡論」を、しかも江戸ッ子自身から聴くとき、いつも一種の不愉快さを感じた。
「江戸ッ子自身が江戸ッ子を馬鹿なんて怪《け》しからんじゃないか。君等は地方の田舎者が、どれ位『江戸ッ子』を尊敬しているか知らないのか。ことに地方の青年少女たちは、死ぬ程東京を恋い焦れると同時
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