るが、これとても同様である。
永田前市長の案か市会側の提案か知らぬが、事実から推して見ると、東京市の道路工事は、都市計画なんぞはどうでもいい、復旧も復興も構うことはない、工事だけドシドシ進行すればいいのだという風に見える。
それを東京市民はアッケラカンと立ち止まって見物しているのである。
それ許《ばか》りでない。
震災後、東京市中の道路は恐ろしく悪くなった。日比谷公園前の近江《おうみ》の湖《み》を初めとして、新しい東京八景が出来ているが、それは皆、往来に山や谷や湖や川が出来たのに対して名づけられたものである。何も無い処でも一間置き位に、深さ数寸、さし渡し一尺位の穴がベタ一面にあいている。
そのために東京市中をテクる腰弁の群れは、殆ど全部が雨天の時に長靴をはくようになった。当り前のオーバーシューズではうっかりすると沈んでしまうし、自分のハネや自動車の泥煙を防ぎ切れないからである。
晴天の日でも自動車は出来るだけ徐行する。うっかり急ぐと、乗っているものは腰かけからハネ落されるからである。過日《こないだ》のしけ[#「しけ」に傍点]の時などは、下水を溢れて滝のように流るる汚水の中に
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