い向きもある。こんな「足」が本当にこんな足なら、先ず音《おと》なしい足であろう。
 この程度の学生を先ず中流生活者として、その純小遣いを十五円乃至四十円位に見積る。彼等の驚くべき贅沢さや質素さは皆この範囲から出て来るのである。更に質屋や古本屋、又は友人間の貸し借りなぞいうのを加えると、一層活躍の範囲が広まることになる。
 しかも彼等の小遣いは、普通の中流生活者の小遣いのように世間的の意味を含んでいる分量がまことに少い。頭を使わずに只漫然と遣い棄てるのが多いので、この点から云うと彼等の生活は中流の中《うち》でも上流に属している。
 その上に彼等は、当り前に学校に通って当り前に勉強さえしていれば、首の心配は無論ない。只怖いのは落第ばかりとなる。それも十中八九は為替の多寡に影響しないのだから、真に不景気知らずと云ってよかろう。
 こう云うと又、記者の非常識を攻撃する諸君が出て来るかも知れぬ。
「新聞記者なんてものは筆の先でどんな事でも書く。いくら学生だって、不景気を知らないでどうなるもんか。第一下宿の飯が不味《まず》くなるから、時々滋養分を摂《と》らないと頭がわるくなる虞《おそ》れがある。フ
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