レッチャー式なぞを遣ったら落第するにきまっている。空気も悪いから郊外へ行く必要があるし、ホコリが非道《ひど》いからロイド眼鏡も奮発せねばならぬ。雨が降ると靴カバーが利かないから、八円のゴム靴を買わなくちゃならぬが、そいつが又じきに駄目になる。電車はコムし書物はよごれるしで、オツユの出る弁当箱は持てないし、嗜眠《しみん》性脳炎がまた流行《はや》っているので、一寸風邪を引いても医者に見せなくちゃならないし、五十円や百円の仕送りでは人間らしい気持ちで勉強は出来やしない……」
承われば一々御尤も千万であるが、さて街頭に立って諸君の生活振りを拝見すると……。
制帽と鳥打帽の手品
近頃東京の往来を歩いて見ると、学生仲間に鳥打帽が非常に流行している事に気が付く。
学生だから鳥打帽を冠るのが当り前かも知れぬが、それが又タダの鳥打帽でない。気をつけて研究すると実に変妙不可思議の鳥打帽で、支那や印度の魔術師でも眼をまわす位である。
勿論、その鳥打帽は普通の鳥打帽で、価格の上下や型の変化こそあれ種も仕かけもない。しかもその鳥打帽でどうしてそのような奇術を使う事が出来るかという事は、苟《
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