べにくいからでもあるが、今一つには彼等の生活を学生生活の華として敬意を払ったわけである。
 東京に家のある学生の生活は一寸見当が付かぬが、為替党にもいろんな階級がある。一ヶ月二百円以上も送って来るのが居るかと思うと、労働して大学に通った上に、故郷の弟に四円|宛《ずつ》送っている非為替党もある。
 毛色の変ったのでは、春画を描いて学資を作って美術学校を出たのが居る。後家さんの男妾になって専門学校に通っているのがある。米相場が名人で親仁《おやじ》にしかられしかられ語学をやっているのが居る。養子政略、入り婿政略で、学校を出たあとは野となれ山となれ式の生活や、納豆屋の元締をして奢《おごり》を極めている大学生なぞ、調べるとなかなか面白いがここには略す。
 何しろ学生だから、年が若くて元気で、無責任な延び縮みが出来るから、これ位面白い生活をやっているものはない。
 先ず普通八九十円以下五六十円以上の為替生活者が大多数で、下宿料が三四十円位、汚い間借りで十円から十五円どころであろう。但、間借りは飯抜きだから、下手を遣ると下宿以上になる。尚このほかに月謝、書物代、洋服代なぞが時々足を出すのは止むを得な
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