女中が作るでしょう。漬物は売りに来るでしょう。お料理は取るでしょう。だから家事科なんて必要はないわ」
という式になる。つまり奥様は一切手を濡らさないのが最高の文化なのだそうな。
まだある。
音楽なぞも文化生活には必要なものだそうで、楽譜や楽器の売れる事売れる事。よくきいて見ると、ハーモニカやシロフォネンなどは子供のオモチャで、マンドリン、ギタ、ヴァイオリン、洋琴やピアノなぞが本当の文化的価値があるものだそうだ。しかも昔なら、
「鐘一つ売れぬ日も無い江戸の春」
というところを、今日では「ピアノ一つ」と改めて差支えない勢である。
尤《もっと》も本当のピアノは高価《たか》いから、この頃では和製の手軽い安いのがドッサリ出来るからで、正にピアノ全盛になって来た。
尤もこれはブンカブンカと鳴るからかと思うと、蓄音器も文化生活に必要なものだそうで、この頃では縁日なぞでもチーチーガアガアとレコードを売っている。
まだまだ数え立てると限りもないが、要するにトドの詰まるところ文化生活の理想は何かと考えて来ると、彼等が学生や腰弁時代に口を極めて罵っていた、ブルジョアの金殿玉楼生活だという事にな
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