米国人は日本人を獣《けもの》扱いにした……そんな獣の眼まで診察してやる義務はない……と。今に親米になったらどうするだろうと思うが、そんな事は構わない。目下の人気さえ取れればというつもりらしい。
「商品の民衆化」とは
今一つ、記者の「眼」を驚かした眼のお医者がある。銀座尾張町の四辻で電車を待っていたら、袢纏《はんてん》着の男がビラを一枚|呉《く》れた。活動の引き札かと思ったら大違い。
「あなたの眼は健康ですか。文明社会の生活では眼ほど大切なものはありませぬ。眼の良し悪しは直《すぐ》に一身の安危になるのですから、不断の注意を怠ってはなりません。おわかりになりましたならば、○○ビルディング何号医学博士の診察所へいらっしゃい。何曜と何曜は診察無料です」
という意味で、福岡市のお医者様でこんな事をやったら、忽ち仲間外れにされそうな広告である。
人格と徳義を最も大切にするお医者様の、しかも何々博士と銘打った人までがこうした最新式の営業振りを見せる程、震災後の東京の商売は発達しているのだから、他は推して知るべしである。勿論、蒸溜水を注射して十円取るのと違って、国家に貢献する事は大
前へ
次へ
全191ページ中139ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング