》にもならないのを、今云ったようなわけで捨て売りにするんだ……。
 失礼ながら皆さんは職業紹介所のアブレじゃあるめえ。バラックの東京から鉄筋コンクリートの東京になるまで奮闘しようという人だろう。そのバラックの寒さを凌《しの》ぐにゃあ、これが一番だ。ボロボロ綿の晒《さら》しグルミの夜具を買ったって、五円十円は飛んで行く。それがどうです、この熊の皮が八円半だ……こっちの大きい方は二十円コッキリと云いたいが、もう仕舞い時だから只の一本半……十五円に負けとく……。
 それからどうです……こっちの白いのは……これが北極の氷山に住んで人を喰う白熊だ。五十や百のハシタ金で手に入る代物じゃない。これが昨日《きのう》までは四十五円と云っていたが、今日は諦めて四十円にしておく。惜しいけれども仕方がない。その上負けろったら四十一円だ……どうです、買いませんか旦那……まったく末代道具ですよ……こっちの親方あ、どうです……」
 こう聴いているうちに、扨はバラック住居《ずまい》の連中の稼ぎ溜をねらっているなと感付いた。しかしそれにしてもあんまり安過ぎるから、調べて見たら、みんな黒犬と羊の皮だと聴いて開いた口が塞が
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