んだから……。
あっし[#「あっし」に傍点]等あ、ふだん北海道に出かけている皮商人《かわあきんど》ですがネ。ちょうど北の方の千島、カムサツカ、北海道の山奥あたりから引《し》き上げて来る熊の皮屋から皮を仕入れて、あと月の半ばに東京へ着いたんです……。
ところで御承知の通り、毛皮商人《けがわあきんど》ってえなあ半期取引ですから、今コレだけの皮を捌《さば》いても、この節季でなくちゃ金が取れねえ。そこへ金の要ることが出来たんで、こんな事をやっているんですがネ。慣れねえから、失礼なことを云ったら御免なさい。だが本物の熊の皮が二十円や三十円じゃ、あなた方の手には這入りっこない。御承知かしらねえが、熊の皮には二十八通りあって、価格《ねだん》もいろいろあるが、これは北海道の羆《しぐま》の皮だ。こんな立派な皮で、この通りお上《かみ》の検査済みの刻印の付いた奴が、只の十円と云いたいが、思い切って八円半までお負けしとく……。
御存知か知らないが、皮のなめし[#「なめし」に傍点]は東京が一番ですよ。梅雨時になって虫の這入るような事は絶対にない。その代りなめし賃が高価《たか》い。差引くとあとは幾何《いくら
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