。
こうした現代式は単に浅草の仲見世に限らない。第六区の方へ抜けて行く左右の通りの店はみんなそうである。
かなり大きな洋品店でも奥の方から一々持ち出す模様はなく、洗い浚《ざら》い店に並べて、一ツ残らず名刺型の紙に洋数字を書いてくっつけている。
中には半紙三枚続き位の西洋紙に、
「可驚《おどろくべき》提供《ていきょう》……二円八十銭」
と色インキで書いてブラ下げて、その下に相当な中折れ帽を硝子《ガラス》の箱入りにして、店の前に出してあるのもある。つまり値段を看板にしたわけである。「薄利多売主義」とか「負けぬ代りに安い」という看板は、こんなのに比べるととても廻りクドくて問題にならぬ。
但、その帽子を手に取って見ると、途方もなく大きいので誰も買おうとしないが、それでも相当に人だかりがしている。この辺も浅草式の代表的なところであろう。
そのほか浅草のカフェーの菓子、握りすし、盛すし、天プラ、印形、青物なぞ、何でもカンでも正札付きで、中には支那料理の折詰なぞいう珍品もある。
無正札は「女」だけ
浅草辺の店ではショーウインドに凝った趣向なぞを用いない。旗や看板なぞを極端
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