二字を光栄という言葉に取りかえて云っているように思われた。
それはまあいいとして、最後に前の東京市長、今の日露政治ブローカー後藤新平の処へ持って行くと、一度断られ、二度ことわられ、それでも三度まで持って行くと矢っ張りことわられた揚句《あげく》、「余が東京市を愛するのは、市長となって愛するよりも、市民として愛した方が適切と思う」というような意味の宣言書を、新平の名前で東京中の新聞に発表されてしまった。「お前の旦那になってやるよりも、情夫《いろ》になって可愛がってやる方が洒落《しゃれ》てるじゃないか」といったようなことわりようである。何だかカラハンあたりから直伝のような響もあるように思われる。
然るにこの新平さんは実は第一候補で、第二候補はこれも前の満鉄総裁、文豪夏目漱石の友人で、女好きで、酒好きで、ウソかホントか、梅毒で片目をつぶしているという中村是公のオヤジさんであった。そこへ水を向けると一も二もなく承知して、「オヤまあ」と思う間もなく、ノコノコサイサイ永田秀次郎氏があと釜に座ったのが、丁度十月の初旬のことであった。同時に、その間一ヶ月間市長の椅子を空《から》っぽにした責任を負うと
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