キキリツツリ
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)継子《ままこ》
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 露子さんは継子《ままこ》で、いつもお母さんからいじめられて泣いてばかりいました。
 夜は毎晩おそくまで御飯のあと片付けをしたり、お使いに遣られたりしました。寝る時はまた、お台所の際《きわ》の板張りの上に薄い薄い蒲団《ふとん》を敷いて、たった一人ふるえながら寝なければなりませんでした。
 ようやく寒いつめたい冬が過ぎてあたたかくなりましたので、露子さんは大喜びでした。けれどもそれと一所に悲しくてならぬ事が出来ました。
 露子さんは尋常の四年生でしたが、六年生にも負けぬ位学校がよく出来ましたので、今年から女学校に這入りたいと思って、或る日思い切ってお父さまやお母様に願って見たのですが、お父様は宜《よろ》しいとおっしゃっても、お母様がお聞きになりません。
「女の癖に女学校へ行くなんて余計な事です。女学校へ這入るには試験を受けねばならぬでしょう。試験を受けるために勉強するからといって、うちの仕事をなまけようと思うから、そんな事を云うのです。試験の前に勉強して女学校に這入れたって、本
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