した。
露子さんは、もしや自分の事ではないかと思って胸がドキンとしましたが、校長さんがニコニコしておられるので安心して、丁寧にお辞儀をして別れましたが、校長さんはそのまま露子さんのお家《うち》へ這入って行きました。
それから学校へ行って、その日の学課を済まして帰ろうとしますと、校長さんから一寸来いと云われましたので、又胸がドキンとしました。
こわごわ校長室に這入って見ると、校長さんは矢張り今朝《けさ》の通りニコニコしながらこう云われました。
「露子さん。私は今日あなたのおうちへ行って、あなたの御両親にお眼にかかって、あなたを女学校に入れて下さるかどうかお尋ねしたのです。そうしたらあなたの御両親は、女の児に学問は要らぬと云ってお嫌いになりましたから、私は、そんな事はありませぬ。これからの女は出来るだけ学問をしなければ外国に負けることをお話して、お許しを受けて来ました。そのうえ毎晩九時から十時まではあなたに勉強のおひまをいただくようにお母様にお願いしておきましたから、そのつもりで勉強して立派に女学校に這入って下さい」
露子さんは夢かとばかり驚いて、嬉し涙をハラハラとこぼしました。そ
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