らも露子さんは、あの虫がどうしてあんなに不思議な事が出来たか不思議でなりませんでした。おおかたあの赤い帽子を冠った虫が、あの夜校長さんの処に行って妾の事を云ってくれたに違いないと思いましたが、それを校長さんに聞くのは何だか変なような気がして、とうとう聞かずじまいになりました。それから毎晩毎晩、あの赤い帽子を冠った虫に一度会ってお礼を云おうと思いましたが、その後あの虫は一度も音も立てなければ姿も見せず、只小さな虫穴ばかりが露子さんの家の雨戸の桟にいつまでもいつまでも残っていました。
底本:「夢野久作全集1」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年5月22日第1刷発行
※底本の解題によれば、初出時の署名は「海若藍平《かいじゃくらんぺい》」です。
入力:柴田卓治
校正:もりみつじゅんじ
2000年3月6日公開
2006年5月3日修正
青空文庫作成ファイル:
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