のはそれから二十分後のことだった。甲板の連絡班長のいうところによれば、ワーナー博士外三名は、早くも海底に着き、ロープから離れて海底歩行を始めたそうである。水深百二十メートル、果たして博士一行は如何なるものを、暗黒の大海底において発見するであろうか。
花束の待人
この事件が起こって以来ずっと一緒に手をとって来た親友水戸記者を大西洋に置去り、自分ひとりアイスランドへ帰っていくドレゴの気持ちは、さすがに晴れなかった。
彼は北へ走りだした快速貨物船の甲板に立って、小さくなり行くワーナー調査隊の船団の姿を永いこと見送っていた。やがてその船団は水平線の彼方に没し、檣《マスト》だけがしばらく見えていたが、遂にそれも波間に見えなくなった[#「見えなくなった」は底本では「見えずなった」、48−下段−9]。ドレゴは溜息と共に甲板を去り、サロンに入って酒を注文した。
それから彼は呑みつづけた。昼も夜もアルコールの漬物みたいになって、ひとりでわけのわからぬことを口走っていた。彼は水戸をどうしてあそこへ置去りにしたのか、それについて良心が咎《とが》めて仕方がなかった。そして、親友水戸の上に何か恐ろ
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