るのはまだ早い。海底で異常地震に遭遇したときは、かねての注意に基き、わしからの信号により行動するように。冷静を失うと結局いいことはないから、どうかそのつもりでいて貰いたい」
 博士の非常警報が出たときに限り、全員は応急浮揚器の紐を引いて、海底に[#ママ、「海上に」又は「海底から」?、47−上段−22]浮かびあがる手筈になっていた。それ以外は、どんなに不安に怯《おび》えるとも、博士を信頼して頑張ることになっていた。
 ホーテンスも水戸も、列の最後尾に並んで共に元気だった。
「おい水戸君。昨日D十五号だけがあのとおりひどくやられて他の艦船[#「艦船」は底本では「艦舟」、47−下段−5]が大した損害を受けなかったことを君は不思議に思わんかね」
 ホーテンスは、闘志満々たるところを示して、この期になお同業者と討論を持ちかける。
「不思議は不思議さ。およそ何もかも不思議なんだ。だがその不思議と映る現象――その事件そのものを素直に受取るより外ないね」
「ははは。そこで君の持説“地球発狂事件”かね」
「そうなんだ。それはとにかくD十五号事件によって、あの驚異の力には方向性があるといえると思うんだ」

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