あるよ」といいながら机上の書類を取上げ、
「D十五号の遺留品を、僚艦が現場附近において収容した。その品目がここに書出してある。ゆっくり見給え」
とホーテンスたちへ会釈《えしゃく》した。
「それについて何か特別の注意すべき材料がありましたか」
水戸が訊《たず》ねた。
「遺留品は、その表にあるように、殆ど原形を停めないまでに破壊されている。その二三のものを電子顕微鏡下において調べたが破壊面は非常な微粒子――コロイド程度にまで粉砕されている。火薬などによる普通の破壊事件では見られない現象だ」
「なぜそんなに破壊面が粉末化しているのでしょうか」
「それは今のところ不可解だ」
「その破壊面附近に、ウラニウムなどの放射性物質がついていませんでしたか」
「今までのところ、それを検出し得ない。多分付着していないのであろうと思う」
「それはおかしいですね」
とホーテンスが横合いから口を挟《はさ》んだ。
「すると、D十五号は原子爆弾によって破壊されたのではないといい切っていいわけですか」
「まだ、そこまではいい切れないが、とにかくこれまでに知られたウラニウム爆弾でないといえる可能性が多分にある」
「
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