水戸もドレゴも、その渦巻の中に顔を見せていたが、給仕が入って来てドレゴに何か紙片を渡した。ドレゴはそれを受取ると、はっとした様子で立上るとサロンを出ていった。
 ドレゴが再びサロンへ戻って来たのは、それから三十分ほど後のことだった。水戸は逸早《いちはや》く彼を認めた。そして彼が非常に興奮していることも、同時に見て取った。
「どうしたんだ、ドレゴ」
 水戸は彼が元の席についたとき、低い声で訊《き》いた。
「うん……後で話すよ」
 ドレゴはそう応えて、苦しそうに顔を歪《ゆが》めた。水戸はそれ以外彼を追求しなかった。今この友人を更に苦しめてはならないと思ったからだ。
 宴が果てたのは、それから一時間後のことであった。時計は午後十一時を廻っていた。酩酊はしていたが、さすがにホーテンスはサロンを出るとすぐワーナー博士たちの打合せ会議が済んだかどうかを訊いた。会議は少し前に終わっていた。ホーテンスは、水戸とドレゴを呼んで博士の部屋を叩いた。
「ようやく準備は完了したよ」
 と博士は満足らしく微笑した。
「その後、事件について何か判明したことはありませんか」とのホーテンスの質問に対し、博士は「
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