いうちにそれを決行することとして計画を樹《た》ててみる。職員以外にも希望者があれば同行を許可するから、あとで僕のところへ申出で給え」
 博士はそういうと、パイプを口に咥《くわ》えて、この観測室を出ていった。
 後には喧噪《けんそう》が残った。思いがけないワーナー団長の冒険計画についての是々非々の討論が活発に展開していった。賛成者はもちろん少数だった。
「なによりもまず生命の危険率が頗る大きいことを考えなくてはね、仮りにかの怪奇なる怪力源問題がなかったとしても大西洋の海底を人間が潜水服でのこのこ歩くなんて前代未聞の冒険だよ」
「やっぱり歩一歩と地味な観測を続けるのがいいのではないか。それが一番の近道ではないだろうか」
「いや、団長は人類の幸福のため自分の尊い生命を犠牲にしておられるのだ。その崇高な決意に対し、われわれもまた団長と同一精神に燃え、世界人類の幸福のために大西洋の海底を歩くべきだ」
 この結論は容易に一つの穴に流れ込むことはなかった。その間に調査団船とその護衛艦隊は恐怖の異常地震帯を離れること五〇キロの海域に脱出を終わったところで、各艦船は舷と舷をよくつけ合って纜《ともづな》を
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