た、「だがたいへん幸運な収穫だ、われわれは、第二の怪事件を、自分の目で一伍一什《いちごいちじゅう》はっきりと観察することが出来たんだ」
「それはそうです。しかし博士あの爆発事件について、どういう感想を持たれますか。例えばあの事件とゼムリヤ号の間にどんな関係があると考えられます」
 ホーテンスは猟犬のように迫った。
「それは興味ある問題だ」博士は肯いた。
「それがはっきり分かるときは、ゼムリヤ号事件も先刻の事件も共に解けるだろう。が、わしの手許には、まだこの問題を解くべき何の因子も集まっていない。むしろ……そうだ、むしろ君がたの意見を聞いて参考にしたいくらいだ」
 博士は、あべこべに問題をホーテンスの方へ押しやった。
 ホーテンスは、うむと呻《うな》った。それから彼は数秒間咽喉を鳴らしていたが、やっと決心を固めたという風で、口を開いた。
「僕の感じたところでは、さっきの駆逐艦爆発事件はゼムリヤ号事件よりもっと楽に解ける事件じゃないですか。僕の見たところで、まさか、さっきの事件は明らかに原子爆弾の攻撃によるものだと思いますよ。艦体が海面からもちあげられ、そして火焔に包まれ、それから煙のよう
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