のワーナー博士は、愛用のパイプから紫煙をゆるやかにくゆらせていた。博士は、ちょっと首を左右にふり向けて室内を見渡した。この部屋にいる者の顔色を打診したのであろう。博士の表情が少し硬くなった。彼はパイプを握った方の手をあげて、部下達の方へふり向いた。
「われわれはもう危機を脱した。心配することはない。あと五分で、みんな配置から解放される。――記録だけは大切に保管して置くのだよ」
博士のこの言葉に、期せずして一同の口から大きな溜息がとび出した。が、誰もまとまった言葉をいう者がなく、聞こえたのは呪いの声だけであった。
真先にワーナー博士のところに近づいたのはホーテンスだった。続いて水戸がドレゴの腕を押しながら、それに加わった。
「団長、ありゃ何です。今のあのすごい爆発はどうして起こったのですか、あの駆逐艦の失態ですか、それとも――それとも異常海底地震の禍いですか、まさかそうではないでしょう、では何とあれを説明しますか」
平常のホーテンス記者の冷静がどこかへ隠れてしまっている、彼は大きく喘《あえ》ぎながら博士の前に迫った。
「さあ、今は分からないという外あるまいね」と博士は首を左右に振っ
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