になって四散し、天へ昇っていきましたからね。だからあれは海中で原子爆弾の攻撃を食ったのに違いありませんよ。ゼムリヤ号の場合はそれとは違うと思われる。だから両者は別物ですよ」
 ホーテンスはここで言葉を停めて、博士の顔色を窺った。博士はちょっと眉の間に皺《しわ》をこしらえただけで、何ともいわなかった。
「僕は同じ原因から起こったことだと思いますがね」
 水戸記者の声だった。ホーテンスはふり返って水戸を認めると、笑いながらもっと前へ出て喋れと合図をした。水戸記者はホーテンスと反対の意見だが、何を考えているのであろうか。

  博士の冒険計画

「水戸君の説は、どうなんだ」
 ワーナー博士はパイプに新しい煙草を詰めながら、東洋の記者の面に一瞥《いちべつ》を送った。
「毎度のことながら、僕の説には、はっきりとした證拠の裏附けがないのが遺憾です」
 と水戸は本当に残念そうな顔をした。
「が、二つの事件は同一手段によったとしか考えられません。もちろんさっきの事件も、原子爆弾によるものとは思われない」
「なぜ原子爆弾でないというのかね」
「ホーテンス君。君だってその点については充分疑問を持っているの
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