を以てドレゴの卒倒事件は片付《かたづ》いた。彼は、大きな酔いが廻って来たところで不自然な緊張を我身に強いたのがよくなかったに違いない。さて、ワーナー博士の学者たちは、この間に何を探し当てたか。
「……」
研究員たちは、林の如く静かであった。先刻以来、石のように固くなって微動だにしない様子だ。ドレゴの卒倒事件にさえ誰もが気がついていないと見える。
ドレゴは起上って、隅っこの安楽椅子に自分の身体を投げこんだ。それをホーテンスの眼が抗議するように睨《にら》んだ。
「ホーテンス君。博士たちは何かを掴んだらしいね」
と水戸は、彼の胸を引いた。
「うん。何を掴んだかな」
そういったホーテンスは、つかつかと博士の傍へ歩み寄った。
「博士。何があったのですか、地震はどこに現われていますか」
「叱《し》ッ」
博士は、ホーテンスの方へは振返らないで、自分の唇に人指し指をあてた。
「失礼しました……」
ホーテンスは悪びれず謝罪してから、水戸の方へ手をあげて合図をした。
水戸は肯いて、極度に足音を立てないように注意して、ホーテンスの傍へ寄った。
何事も未だ起っていないようだ。だが、今《いま》正
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