まだ。異常海底地震帯へ本船が入るのは、今から三時間後だ」
「三時間後。ほう、もうそんなに現場へ近づいているんですか。本船[#「本船」は底本では「本舟」、34−下段−1]はトップ・スピードで走っているんですね」
護衛艦に周囲を守られた調査船サンキス号は、一路問題の地震帯へ急行している。果してその現場にどんなものが待っているだろうか。
遂に時到る
船室の連絡用拡声器から、警報ブザーの音が気味わるく響いた。乗組員たちは、それぞれの胸に、どきんと不安な衝動を感じた。
「あと十五分で本船は問題の異常海底地震帯へ突入する。乗組員全部は、只今から警戒配置につけ」
南下中の掃海船サンキス号は、俄然緊張した。船橋には船長以下の硬い顔が並んで見える。その羅針船橋より一段高い無電室が、調査団の部屋に用意されてあったが、そこには団長ワーナー博士を始め有能なる研究員たちが、めいめいの観測装置にぴたりと寄添って、さてこれから如何なる異常現象が計器の面に現れるかと、軽い身慄《みぶる》いと共にその時を待った。
ドレゴ記者も水戸記者も、ホーテンスと同じようにこの部屋に詰めていた。三人の記者たちはその隅に
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