ていたが、やがてにやりと笑って、それをドレゴに返した。
「この手紙を書いたのは女だよ」
「へえ、女か、どうしてそれが分る」
「とにかく女だと分る。しかしこの警告は、果してこの女から出たか、それとも他に糸を引張っている者があるかどっちか分らない。それはそれとして、われわれは今まで少し呑気《のんき》すぎたよ。これからはもっと注意を深くせにゃならない」
 水戸は、そう言ってドレゴに警告した。
「おお君たち、わが艦隊の勢揃いを見て愕いたですか」
 背後から声をかけられて、ホーテンス記者がやって来たのだと気がついた。
「わが艦隊?」
 ドレゴが目を丸くした。
「ああ、あれだ。駆逐艦らしきものが三隻、こっちに潜水艦が二隻……」
 水戸は数えた。
「そのとおり。われわれはこの調査の遂行に万全を期している。用意は周到である。しかし君たちは、あまり大袈裟《おおげさ》だと笑うだろう」
 ホーテンスがそういった。ドレゴと水戸とは共に頭を左右に振った。
「もう調査は始まっているの」
 ドレゴが訊いた。
「観測はもう始まっている」
「何か手懸りになるようなものが出ましたか」
 と、水戸がたずねた。
「いや、まだ
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