が、こうなんだ、――君は君の寝室へ飛込んだゼ号の手斧に放射能物質が付着しているかどうか確かめたことがあるだろうか、もし君がそうした注意を怠らなかったとしたら、君は今日サンキス号の客になりはしなかったろう、君の崇拝者より――というのだ」
「へえ、そいつは愕いたね」
水戸はドレゴの顔を改めて見直した、この友は、このことをなぜ二日間も黙っていたのだろう。
「で君はどう思う」
「そういわれりゃ僕も手落があったよ」
と水戸は手斧に放射能物質が付着しているかどうかを調べようとはしなかった点に手落のあったことを認めた。
「だがね、いつもいうことだが、そんなことは本事件の中の末梢部分なんだ、どっちでもよい、いや僕は恐らく手斧に放射能物質は付着していないと思う、それよりも問題として捨てておけないのは、その手紙を寄越した『君の崇拝者より』というやつだが、一体誰だね、君の崇拝者というのは」
「さあ、さっぱり見当がつかないよ。全文タイプでうってあるしね」
「その手紙、持っているかい」
「うん、ここにある」
ドレゴは、ポケットから皺くちゃになった封筒を引張りだして、水戸に見せた。
水戸は、それを拡げて見
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