レゴは、こっちへ来て失敗したかな、ヘルナー山頂にいた方がよかったかなと、ちょっと動揺した。
「なんの、大したものは有りはしないよ。結局において彼等もまたこの大西洋へ後から追駆けてくることになるのさ」
 水戸は、そのことに信念を持っているようだった。
「なぜ、そう思うんだね」
 ドレゴは、まだ思い切れないらしい。
「だってね、そもそもゼムリヤ号はあの事件の被害者なんだから、船内を探してみても何にも有りはしないよ。参考になるのは、被害程度だけだ、それなら、われわれが外から見た結果と大した変りはない筈」
「ふうん。だが、原子爆弾の破片でも船内に残ってはいないかな、放射線をすごく出すやつがね」
「呆れたね、君は。ドレゴ記者は、まだ原子爆弾説を堅持しているのかね」
「そんな大きな眼をして僕を見詰めるなよ」
 とドレゴは恥かしそうに笑い、
「実をいうとね、僕は君の説である所の原子爆弾反対説になるべく同意したいと努力していたんだがね、ところがだ、この船に乗る直前、うちの爺やのガロが、僕のところへサンドウィッチの包といっしょに一通の手紙を持って来たんだ」
「ほう。それで……」
「その手紙の文句というの
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