という話さ。いま先生に伺えば、時刻が違っているんだから、これは成立たないと分った……で先生は、それでどうお考えになったのですか」
 博士は何事かの考えに注意を奪われていた様であったがこの時、われに返り、
「おお、そのこと。その異常海底地震を、この船で詳細に調べて見たいと決心したんだ。さて海底に何事が起りつつあるか、何物が存在しているか甚だ興味のあることだ」
 と、博士は火の消えたパイプを強く吸った。

  警告の手紙

 サンキス号は、アイスランドを後にして、一路南下していった。航海は快適だった。翌朝になると、もう既に気温が五度ばかりあがっていた。海水も大西洋らしい青味を帯びた色に変った。
 ドレゴと水戸は、船の手摺《てすり》にもたれて、矢のように北へ逃げて行く海波の縞に見惚れていた。
「どうしているかなあ、ヘルナー山の上の記者たちは……」
 望郷の念に駆られたらしい、ドレゴがこんなことをいった。
「もう火災も消えたから船の中へ入って、さかんに瓦斯焔《ガスえん》切断機で鉄壁を切開いていることだろう。そして何かを発見するつもりだろう」
「ふふむ。いい手懸りの品物が見つかるだろうか」
 ド
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