」
「それにゼムリヤ号を山頂にまで吹飛ばした巨大なる力はもちろん原子核エネルギーを活用すれば得られますが、しかし原子核エネルギーは今のところ爆弾の形においてしか存在しません。で、原子爆弾を使ったとすればゼムリヤ号の船体はヘルナー山まで飛ぶことは飛ぶが、あのように船体が中程度の損傷で停っている事はないと思うのです。つまり原子爆弾の力によるものならば、吹飛ぶ前にゼムリヤ号の船体はばらばらに解体していなければならんと思うのです」
「それは卓見だ。どうぞ、もっと君の意見を聞かせてもらいたいものだ」
博士は、水戸の説に傾聴を惜しまなかった。が、当の水戸は、そこで極《きま》りが悪そうに、微笑して、
「……たったそれだけの事なんです。お恥かしい次第ですが……。で、とにかく大西洋をよく調査すれば何等かの新しい手懸りが得られるんではないか、といったわけです」
と水戸が新聞記者らしい率直さでぶちまければ、博士は真面目な顔で頷《うなず》く。
「それで先生の御見込はどうなんですか」
と水戸が訊《き》く側へ変った。
「そのことだがね」と博士はいって、パイプに新しい葉をつめ、ライターで火を移したのち「これは
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