瞭に片附くではないか、それをしないであのような謂《い》い方《かた》の釈明を採用したのは一体どういう訳だろうかね」
 そういって水戸記者は、静かにドレゴの面を見詰《みつ》めた。ドレゴはくすりと笑って、顔を右へ振った。
「おお、可愛想な東洋の哲学者よ、何故君はそんなに懐疑を恋人として楽しむのかね」
 それを聞いて水戸ははっと顔を硬くした。が、すぐさま元の何気ない表情に戻って、
「これは哲学ではない、事件真相の探究だ。悪くいっても推理遊戯の程度さ」
 水戸は軽く笑って、冷たいコーヒーを飲み干した。
「そうかねぇ、それにしてもあの事件の真相だが、原子爆弾の実験説を支持するとして此際《このさい》僕等はどの国へ嫌疑を向けるべきだろうかね、もちろんアメリカとソ連は吟味ずみで、その埒外《らちがい》だ。そこで僕は今、その嫌疑を……」
「待ち給え!」と水戸は小さく叫んだ。
「この事件は原子爆弾には無関係だよ。何故そういうか。これは現在の僕の力では十分に確かめるわけに行かなくて遺憾ではあるが、とにかくこの事件は従来地球上で信じられている法則を破っている点に注目したい」
「すると結局かねて君の自慢の命名、“地
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