、あのようなことになったのであろうというのである。この説は、四種類の答案中最も現実性を帯びているために、日と共に有力となっていった。と同時に、世界に第二の原子爆弾製造国が現われたのかも知れないという点で、原子爆弾の偉力に常に戦慄《せんりつ》を禁じ得ない世界人類に別個の刺激を与える結果となった。そして人々は、果してそうかどうかを一日も早く確かめたかった。
このことについて更に一層人々の関心を高めたものは、世界における原子エネルギー学の権威として知られているワーナー博士の発言であった。博士は研究室において意見を発表して曰《いわ》く、
「ゼムリヤ号を高山|頂《いただ》きにおいて座礁せしめることは、原子エネルギーによるに非ざれば不可能である」
と述べたのであった。
鍵は大西洋に
二つの台風の中心が双方から近づいて一つに合体し、更に一層猛烈な新台風を作ったかのように本事件は大沸騰を始めたのであった。そして、第二の原子爆弾製造国が現実に現われたかのように思い込んでしまう人々が多くなったばかりか、その製造工業に成功した某国とは一体何処なりやという点について熱心な論議が行われるようになっ
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