段−22]山頂へ材料を搬《はこ》び汽船を組立てておいて自ら騒ぎたてたものだとした。しかしこれは現場を検分したことのあるものなら明らかに不適当な解答だと認定することが出来る。その二は“この報道は一種の四月馬鹿的報道であって、ヘルナー山頂にはそういう事件の事実はないのだ”という説である。しかしこれは全然無意味だ、何故ならヘルナー山頂には確かにそうした事実が厳然として存在しているのだから。その三は、奇跡説ないしは怪談説である。つまり、“超自然現象”とするものである。これは余論もあろうがともかくも一説をなしている。しかし然らば如何にしてこの奇跡ないしは怪談が生じたかという説明がつかないかぎり、事件の解答として満足すべきものとはならない。ドレゴの感覚から摘出した“ゼムリヤ号発狂事件”や、水戸の唱えている“地球発狂事件”は共にこの範疇に入るものといってよろしかろう。最後の第四説として“原子爆弾説”がある。
 この説によると、その事件の当時、某国が秘密裡に某海域においての実験を行ったのであるが、ゼムリヤ号は不幸にしてその実験現場附近を航行していた。そのために原子爆弾の巨大なる爆風に吹き飛ばされた結果
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