。ドレゴは血色のいい顔で肯いて、それは聞いて知っていると応えた。
「ほう、知っているんだね。よろしい、ではそれから先の資料だ。水戸君も愕くことがある筈だ、なぜといってこのゼムリヤ号は、調べれば調べるほど、なかなか興味ぶかい船だからね」
 水戸が酒壜を持ってホーテンスの盃に琥珀色《こはくいろ》の液体を注ぎそえた。
「有難う。まず君達を喜ばせるだろうと思うことは、あのゼムリヤ号は最新鋭の砕氷船《さいひょうせん》だということだ」
「砕氷船! そうか、砕氷船か」
 聞き手の両人は、目を瞠《みは》った。
「それも並々ならぬ[#「ならぬ」は底本では「ならね」、21−下段−17]新機軸を持った砕氷船なんだ。この船は、外部から氷に押されるとだんだん縮むのだ。船の幅で六十パアセントに圧縮されても沈みも壊れもしないで平気でいられるという凄い耐圧力を持った砕氷船なんだ。こんな新機構の船が今までに考えられたことを聞かないね」
「ふうん、凄い耐圧力だ。それだけの圧縮に平気なら、氷原でも何でもどんどん乗り切って行くだろう」
 と、ドレゴは羨《うらやま》しそうな顔をする。
「で、そういう事実を、君はどこで発見したの
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