もっと強力な調査機関を備えた第二班の出動を請求した。しかし第二班が到着してみると、そのときには更に一層強力なる第三班の急派を打電しなければならない有様だった。それというのも、発狂したゼムリヤ号の火災は一向下火になる様子がなく、反《かえ》って燃えさかる模様が見えるばかりか、近き将来大爆発を起すのではないかとも思われたし、そうかといってこれだけの大掛かりの出張員たちがいつ消えるとも分らぬ火災を傍観しているばかりでも済ましていられず遂《つい》に防火服や防圧服に身を固め、船腹の一部へ突進して溶接器で穴を穿《うが》ち、たちまち噴き出す火焔と闘って懸命の消火作業を続け、ようやく火焔を内部へ追いやると共に、防火服の冒険記者が船体の中へ匍《は》い込《こ》むなどという、はらはらする光景も展開するようになった。しかも、こういう努力に対して酬《むく》いられるところは一向大きくはなかった。たとえば、このゼムリヤ号の航海日記などはどの通信社でも第一番に狙ったものであったけれど、それは誰も手に入れることが出来なかった。というのは、船橋などはもう既に完全に焼け尽し、真黒な灰の堆積《たいせき》の外《ほか》に何も残って
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