り知れ亙ったのである。

  到着

 ドレゴと水戸が、やっぱり一番乗りだった。ヘルナー山に登るには相当の用意が必要だったので、誰でも直ぐ駆けあがるというわけに行かなかった。
 また自動車をこんなに速く山麓へ飛ばす芸も、この呑気《のんき》な町の人々には真似の出来ることではなかった。
 それでも両人が現場に辿りつくまでには、かなりの時間がかかった。両人は全力をあげて能率的に互いを助け合ったつもりだったが、現場についたのは、もう夕刻であった。
 その長い忍耐苦難の連続の道程に、ドレゴは彼の事件発見の顛末の一切を水戸に語って聞かせたのであった。そしてドレゴと水戸の両人は、船体から約二十|米《メートル》以内に近づくことを許されなかった。もしそれを犯そうとすると、熱気のために気が遠くなるばかりであった。
「残念だなあ。一番乗りはしたけれど……」
 とドレゴは口惜しそうな声を出した。
「まあ我慢するさ。それより早いところ第一報を出そうではないか」
 水戸はそういって、リュックの中から携帯用の超短波送受信機を取出して組立始めた。ドレゴはぎょッとした。そうだ、自分は非常に大きい不用意をやってのけたので
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