ぶや》くようにいった。
「アメリカ・インディアンは、コロンブスの船が着く以前において、この世の中に白人というものが存在することを知らなかった。インディアンとしては、それは無理もないことだと思う。当時のインディアンは驚愕と茫然自失の外に、途がなかったのだ。しかしわれわれの場合はどうであろうか」
「なんといわれます?」
 水戸は問い返さないでいられなかった。
「新しいコロンブスは、地球の外から到着したのだ。遂に到着したのだ。われわれは、昔のインディアンと同じような驚愕と困惑にぶつかった。だがわれわれは昔のインディアンの場合とは違い、実は新しいコロンブスのやがて到来するだろうということを予想し得る能力を備えていたのだ。それにも拘らず、われわれはその用意がなかったのだ。私はある天文学者が遙か以前においてそれに関する警告を発したことを憶えている。しかしわれわれはその可能性を肯定したけれど、まさかそれが、われわれの時代に実現するとは思わなかった。だから、新しいコロンブスを迎える用意は全然していなかったのだ」
「新しいコロンブスというのは何者ですか」
「ああ、それは……」博士は呻《うな》り声をあげ

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