心配しながら、ようやく傍へ寄って相手の身体を抱えて起してみた。
「おお、ワーナー博士だ」
 博士であった。博士もまた既に怪人団のために搬び去られたものとばかり思っていた水戸は非常に意外にも感じ、そして大きな拾い物をしたことを悦んだ、だが博士はぐったりしている。気をうしなっているのか、それとも既に事切れているのか。
「博士。ワーナー博士、しっかりして下さい」
 水戸は、博士の身体を空気服の上から強くゆすぶった。が、反応はない。こんどは潜水兜の上から、とんとんと叩いてみた、それでも博士は気がつかない。
(死んでしまったのかもしれない。もしそうなら、なんという大きな損失だろう)
 水戸はやむなく博士の遺骸を背負って後退をつづけることに決めた。彼は博士の一方の腕を持って、博士の大きな身体を背中にかついだ。重かった。水戸の肩は裂《さ》けそうに痛んだ。四五歩前進したとき、彼の足の下に軟体動物を踏付けたらしく、あっと思う間もなく足を滑べらせ、とたんに身体の重心を取られて、博士を背負ったまま派手に顛倒した。
「ううっッ」
 何が幸いになるか分らないもので、博士の身体は背負投げを食ったように大きく半回転
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