、やがて元のようにぴったり閉った。そしてそのあたりは再び暗黒の世界に戻った。
例の飾窓みたいな所だけは依然として灯がついていて、無気味な赤味がかった光を外に投射している。水戸はその影線を選びつつ、しずかに匍出《はいだ》した。彼は観測器械の据付けてあるところまで後退しようと考えた。
飾窓みたいなところから投射する光に捉えられないために、彼は海底を大まわりしなければならなかった。それはかなり苦しい匍匐《ほふく》だった。彼は海によったような気がしながら、泥を掻いて後退して行った。
一つの丘があって、昆布の叢がゆれていた。その向側へ滑り落ちるようにして匐い込んだとき、彼はようやく安心感を得た。それまでは、いつ背後から怪光線をあびせかけられるかと、気が気でなかった。
彼は始めて上半身を起して中腰になった。中腰といってもぎこちない空気服を着ているので事実は寝ているようなものだった。そしてまた後退をつづけた。
と、彼はすぐ傍の岩の蔭に空気服を着た一人の隊員が倒れているのを発見して、たいへん愕いた。
(誰だろう?)
水戸記者はその方へ歩み寄った。相手は倒れたまま動かない。死んでいるのかなと
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