かのため、身体の自由を失ったのであろうと察した。ああ、いつの間にか恐るべき争闘がこの深海底で始まっていたのである。ワーナー調査団対怪物団!
水戸は、今も自分が怪物団に見つけられはしないと危惧《きぐ》しながらも、その位置を動くことはしなかった。もし動けば、たちまち見つけられそうであった。このままじっとしていれば、灯台下暗しで、もう暫くは見つけられずに済みそうな気がした。
怪物たちは、飾窓のようなものの中でざわめき立ち、頭を寄せ、鞭のような細い手を互いに絡《から》みつかせて協議をしているように見えたが、やがてそれを解いて、ぞろぞろと奇妙な歩き方をして奥へ消えた。
「今だ」
と、水戸記者は思った。彼はむっくり起上って、始めてあたりをよく見廻した。そこで一切の事情が分かったような気がした。水戸が今まで横たわっていたところは大きな城壁の真下ともいうべき場所だった。その城壁は相当の高さであって、頂上は見えなかった。また左右のひろがりも見極めかねた。とにかく巨大な艦船みたいなものがこの海底にどっしりと腰を据えていることは確かであった。そしてそれには今も明るく外へ光を出している飾窓のようなものが
前へ
次へ
全184ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
丘 丘十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング